ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
再びドアが開いたのは、それから30秒後のことだった。
今度はバタンと、荒々しく開け放たれて、
三国主任ではない、誰かが入ってきた。
私にはもう、ドアを見ている余裕もなかった。
腕の力はとっくに限界。
プルプルを通り越して、ブルブル震えていた。
誰かが駆け寄る足音を耳にして、
白衣の裾が、視界の隅に映った。
それと同時に、惨事到来。
汗で滑り、私の両手の間をすり抜け、
土下座くんの頭が、床に向けて力一杯落下する。
かち割れる!と思い、
「キャア」と叫んだ私。
思わずギュッと目をつむる。
ゴスンと鈍い音を聞いてから、
恐る恐る目を開けると……
土下座くんの額が激突した場所は、コンクリートの床ではなく、
黒い革靴のつま先だった。
危機一髪。
足を滑り込ませた久遠さんのおかげで、
どうにか流血事件を避けられた。