ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「あ、の、苦しいです……」
土下座くんの掠れた声を聞いて、
やっと話題が彼に移る。
久遠さんは彼の社員証を奪ってから、手を離して解放してあげた。
社員証に鋭い視線を走らせ、低く冷たい声で質問する。
「営業部の山田太郎……。
お前は確か、羽田チームのメンバーだよな?
夏美に近づいたのは、羽田の命令なのか?」
“羽田”という名前に、聞き覚えがあった。
会議室でスパイ容疑をかけられた時、
『お前はどこのスパイだ?
まさか、羽田のチームじゃないだろうな?』
久遠さんに、そう聞かれた気がする。
私の頭に入っている社員名簿には、残念ながら羽田という人物はいなかった。
分からない人物が出てくると、余計に気になってしまう。
久遠さんは腕組みしながら土下座くん改め、山田太郎を睨みつけ、
三国主任は眼鏡のつるを押し上げ、彼をジッと見ていた。
私も彼が口を開くのを待っている。
羽田って何者?
すごい人なの?
私の興味は主にそこにあった。