ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
皆の視線が集まる中で、山田太郎は首をブンブン横に振って、
羽田首謀説を否定した。
「羽田さんの命令じゃありません!
羽田さんの力になりたくて、俺が一人で勝手にやったことです。
卑怯な真似して、すみませんでした……」
山田太郎は羽田という人物をリスペクトしているらしく、
謝ったあとは、その素晴らしさを語りだした。
羽田さんは、いつか自分の開発したビールが世に出ることを夢みて、
日々熱心に、研究に勤しんでいる人らしい。
と言っても、研究開発部の人間ではなく、営業部の人間。
外勤で外回りしていても、「これも研究」と理由をつけて、
営業せずに、他社ビールを飲み歩くビール好き。
日中からベロンベロンに酔っ払って、
「酒臭い」と、営業先から苦情がくることもあったそうな。
勤続30年のベテラン社員なのに、ビールが好き過ぎて、
一度も昇進昇給したことがないという、伝説の男。
勿論、彼の開発したビールが商品化されたことも一度もない。
プレゼン大会の度に「今年こそは!」と言っているそうだ。