ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
誰に褒められるより、久遠さんに褒められるのが一番嬉しい。
頭の上の手の温もりも嬉しくて、
ニヤけてしまいそうになる。
ニヘラッと緩んでしまいそうな頬に一喝入れて、普通の表情をキープし、すまして言った。
「そんなの当たり前です。
何があっても、どんなに脅されても、私は絶対に秘密を漏らしません」
それは心からの気持ち。
久遠さんの不利益になることは絶対にしないと、言い切れる。
それなのに、頭に乗せられていた手が離れていった。
急に温もりを失い、少し不安になる。
長身の彼を見上げる私。
視線が合うと、30cm上から降ってきたのは、こんな言葉だった。
「それは無理だろう。
“絶対”は有り得ない」
「な、何でですか!?
まだ私をスパイ扱いして疑うつもりですか!?」
彼の物言いに驚いて、詰め寄るように聞くと、
淡々とした説明が返ってきた。
「お前を疑っているわけじゃないが、
人間である以上“絶対”は有り得ないんだ。
本能のままに行動する動物と人間は違う。
負の感情に支配され、損得を考えて生きるのが人間だ。
お前が人間である以上、絶対はない。
よって、完全に信じることも不可能」