ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


まるで選挙演説みたいなプレゼンをしているのは、

三日前に備品保管庫で土下座していた、あの人だった。



土下座くんの名前は何だったか……

酔いの回る頭で考えていた。



佐藤一郎? 何か違う。

鈴木吾郎? これも違う。


うーんと考え思い出せず、

まぁいっかと興味を失った。




「田丸さん、羽田チームのビールも試飲するかい?」



すっかりグラスの運び役となってしまった三国主任が、私に聞く。



「ふぁい。ろみます〜」



飲みますと言ったつもりで、今日何十杯目かのグラスを受け取ろうとした。



その手を止めたのは、久遠さん。



「もうやめとけ。お前は酒に強くない。

それ以上飲むと倒れるぞ」



そう言って、私の手首を掴んだ。



久遠さんは全く酔っていなかった。



同じくらい……いや、全てのビールを試飲している彼は、きっと私の倍は飲んでいる。



それなのに、至って普通の顔色で、イケメンフェイスは崩れない。



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