ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
私の問い掛けに、母から答えは得られなかった。
ピーガガガ……と雑音が入り、
通話が切れてしまう。
受話器を置くと電話は薄れて消えてしまい、
代わりに目の前にドアが現れた。
ダークグリーン色した重厚感ある扉は、
久遠さんのマンションのドアだ。
ドアが開き中から出てきたのは、
白衣の彼。
肩にはミカコさんが、ちょこんと乗っている。
私の前で二人は頬をすり合わせ、
ラブラブっぷりを見せ付けてきた。
嫉妬する私は、ハムスターのように頬を膨らませた。
そんな出迎えはいらないと、
久遠さんの横をすり抜け、部屋に入ろうとしたら……
長い腕に阻止されてしまった。
ドンと肩を押されて、雲の地面に尻餅をついた。
転んだ私の上に、大きなボストンバッグが投げられる。
それは、彼のマンションに来た時に、衣類や日用品を詰め込み持ってきたバッグだ。
「久遠さん?」
バッグを投げられた意味が分からず首を傾げる私に、彼は言う。
「お前の家は、もうここじゃないだろ?
プレゼン大会は終わった。
二ヶ月の同居も終わりだ。
さっさと自分のアパートに帰れ」