ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ドアの向こうで会話はまだ続いているが、
後半部分まで耳に入らなかった。
「やめろ!夏美が聞いてる!」
ドアを開けてそう声を荒げた、久遠さんの声も耳に入らない。
私が久遠さんを好きになったのは、自然な成り行きじゃなかったということなの……?
ドキドキさせられた全てのシーンは、私を惚れさせるために仕組まれたこと?
一度そう思ってしまうと、全てが演技に思えてしまう。
酢豚を作ってくれたことも、
隙だらけだと注意されたことも、
ミカコさんの脱走で、井戸に落ちた私を助けてくれたことさえ、
全てが……。
その作戦は、いつから始まっていたのか。
もしかしたら、同居しろと命令された初日からなのか。
同居の目的は単なる監視ではなく、私を惚れさせるため?
女は口が軽いと決めつけ馬鹿にして、
男三人は情報漏れを防ぐためだけに、私の恋心を利用した。
ひどい……
そんなの、ひど過ぎる……。