ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
肩を掴まれ、強制的に体の向きを彼の方へと向けられた。
切れ長の二重の瞳が、探るように見下ろしていた。
「なぜ、怒っている?」
そう聞かれた。
目線を逸らし、口をへの字に曲げて眉根を寄せている私。
決して怒っているわけじゃないけど、そう取られても仕方のない顔をしていた。
「怒っていません……」
なるべく穏やかな声で答えたつもりだった。
久遠さんは小さな溜息をついて、
諭すように言った。
「怒っていないなら、きちんと説明しろ。
なぜ連絡入れずに先に帰った?
一緒に帰りたいと言ったのはお前だろう?
夕食も食べずに早い時間からベットに入っている理由と、
俺を避ける理由も説明しろ」
言われている内容は、もっともだと思う。
一緒に帰ろうと言い出した本人が、メール一通送らず先に帰るなんて、酷い話だ。
庶務課に寄って、私がいないことを知った久遠さんに、
社内をあちこち捜させてしまったのかも知れない。