ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
いつまでも理由を言わずむくれ続ける私に、
彼の不機嫌は、とうとう怒りに変わってしまった。
真上から睨みつける瞳に、色が灯る。
普段は見せない男の色気を漂わせ、綺麗な顔が斜めにゆっくり下降してきた。
やっと私は慌て始めた。
キスだけで止めてくれるなら、
またあの極上のキスを味わってみたい気もするけど、
今は「襲うぞ」とハッキリ言われている。
キスだけで止めてくれる保証は、
どこにもない。
久遠さんが好き。
好きだけど、脳細胞に染み付いたポリシーを変えることは不可能。
将来結婚してくれる人じゃないと、抱かれるのは嫌だと思ってしまう。
久遠さんは私を好きではないし、
結婚なんてカケラも考えていないだろう。
『これだから女は……』
『女って奴は……』
彼の口から度々、そんな言葉を聞いてきた。
彼の中で私を含めた全ての女性は、いいイメージではない。
それはきっと、過去の研究所時代に、恋人に裏切られたトラウマが影響しているせいだと思う。
久遠さんはこの先ずっと恋人を作らない。
『彼は結婚しない人』
私の中で、そんなイメージが出来上がっていた。