ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんから、不機嫌オーラが消えた。
じっと私を見下ろし、真顔で言う。
「付き合っていないと、俺が言ったから怒ったのか」
もう黙り込んでいても意味がない。
仕方なく正直な気持ちを、とつとつと明かした。
「怒ってないと言ってるじゃないですか。
怒る理由がないもの……
私達は付き合っていない。
そんなこと分かっています。
久遠さんはいつだって正しい。
間違っているのは私。
そう分かっていても、悲しくなってしまうんです。
これ以上はミジメになるだけなので、もう放っておいて下さい……」
久遠さんは長い足を組み、私を視界に入れたまま何かを考え込んでいた。
温度設定されたエアコンが、時々暖気を部屋に吐き出す。
その唸り声が、ことさらに大きく聞こえた。
静かな無言の時が20秒30秒と経過して、気まずい雰囲気だった。
気まずいと思っているのは、私だけかも知れないが。