ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
タクシーは静かに走り出す。
冷たい雨に濡れた路面に、街の明かりが反射していた。
街路樹は近づくクリスマスに向け、星屑のようなイルミネーションで飾られている。
それを綺麗だと思えないのは、意識を車窓に向けられないから。
片岡さんが、私の手を握ったまま離してくれない。
ドキドキするのは、ときめいているせいではなかった。
ギュッと痛いほど握ってくる手に、好意以外の強制的な何かを感じていた。
彼は最上の良縁。
信じないと、いけないんだよね……?
自分の心に問い掛けてみるものの、当然のことながら答えてくれる者はいなかった。
ハリストン・パークホテルに着いても、片岡さんは手を離してくれなかった。
紳士的な態度に、徐々にほつれが見えてきた。
ロビーのふかふかな絨毯に、無理して履いてきた8cmヒールのパンプスが沈んで歩きにくい。
それに気づいていないかのように、彼は私を引っ張るようにして、足早にエレベーターに乗り込んだ。