ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
全身から力が抜けていく。
落ちたスマホを拾い上げることもできない。
私の代わりにスマホを拾い上げたのは、片岡さんだった。
「久遠礼士……。
天才には俺の苦労なんて、分からないだろうな……」
何の接点もないはずの久遠さんを、天才と言い表した彼。
それに驚くことも怪しむことも、できなくなっていた。
意思に反して瞼が下がり、視界は暗闇に包まれた。
混濁する意識で辛うじて、片岡さんの呟きを聞き取った。
「あんたを利用させてもらう……
俺にはアレが必要なんだ……」
それが彼の狙いだった。
その言葉を耳にしたあとは、意識は完全に闇の中へと落ちて行った。