ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
初めて見る物ばかりの中で、歪んだ夜景だけは見覚えがあった。
それは、片岡さんに連れられてバーラウンジで見た景色とほぼ同じ。
見ている高さが、幾分低くなっただけの景色だった。
バーラウンジ……?
片岡さん……?
その言葉を思い出し、刹那に青ざめた。
そうだ……
私は薬みたいに苦いカクテルを飲まされて、意識を失ったんだ……。
ここはきっと、ハリストン・パークホテルの一室なのだろう。
私をここに運んだのも、手足を縛ったのも、きっと彼の仕業だ。
私は騙されたのだと、やっと気づいた。
手足を縛っている紐を引っ張ってみたが、肌に食い込み痛いだけ。
もがいてみたけど外れなくて、
自力で外すのを諦めるしかなかった。
バッグを探したら鏡台の上に置いてあり、届かない。
誰かに連絡をとることも不可能な状況だった。