ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
怯える私を見て、彼は薄ら笑う。
それは気持ちの悪い笑い方で、
肌が粟立った。
彼が言葉を足す。
私の推測の間違について、説明し始めた。
「もう一つの質問に答えていなかったね。
あんたを人質に、久遠に何かしようと企んでいるのか……だったかな?
近いけどハズレ。
あんたは人質じゃない。
今から俺の手下として動いてもらう。
青空ビールの久遠礼士が、最近すごい研究成果を上げたそうじゃないか。
あれ?
知らないって顔してるね?
久遠の女のくせに、何も聞いてないの?
“BX-091"
ビール酵母の発酵速度を10倍速める有機化合物のコードネームだよ。
何を作っているかまでの情報は盗めたけど、肝心の中身が手に入らなくてね。
もう分かるだろ?
青空ビールが特許を申請する前に、BX-091の製造方法をあんたに盗んでもらいたい」
説明されて、彼の要求は理解した。
久遠さんの研究成果“BX-091"を盗み、青空ビールより先に特許を申請して、
RED'sビールの物にしようとしているのだ。