ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
疑問はすぐに驚きに変わった。
「ハイ、レイシ!」
彼女が笑顔で口にしたのは、久遠さんの名前、礼士。
まるで久しぶりの恋人に会えたような顔して、
腕を広げて久遠さんに抱き着こうとしている。
久遠さんは体を引いて、その抱擁をかわした。
不機嫌そうな声色で、「やめろ」と一言、日本語で言った。
彼女は口を尖らし、不満顔。
早口の英語で、何か非難めいた言葉をぶつけていた。
大学時代に選択した私の英語は、ちっとも役立たない。
ネイティブスピーカーの会話は、
早過ぎて聞き取れなかった。
廊下のコーナーから身を乗り出して二人の様子を気にしていると、
久遠さんが私を呼び寄せる。
「夏美、来い」
そう言われ、恐る恐る近づいた。