ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
その言葉は、きっと久遠さんの気遣い。
ふたりして英語で話されたら、何を話しているのか気になって、
私は嫌な気分になるだろう。
久遠さんはそれを見越して、私に外で時間を潰せというのだ。
その気遣いは、嬉しいようで嬉しくない。
元恋人とふたり切りにするなんて、久遠さんを疑うわけじゃなくても不安になってしまう。
そんな私の気持ちは、久遠さんに届かない。
財布とスマホを渡され、「頼む」と背中を押されてしまった。
嫌だけど仕方なくて、玄関を出て行こうとした。
美果子さんの横を通り過ぎる時、
彼女が私に何かを言った。
「You're cute kitten……」
クスリと笑いながら言われた英語は、私の耳と語彙力でも理解できてしまった。
“可愛い子猫ちゃんね……"
それは褒め言葉に聞こえない。
久遠さんの彼女には見えず、飼い猫みたいだとバカにされたのだ。