ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


ヒドイと文句を言ってしまったけど、由香の気持ちも分からなくはない。



ここ数日、気分を上向かせようと気合いを入れてみたり、逆にへこんだりを繰り返し、

私だって「いい加減にしろ!」と自分に言いたい。




「聞いてあげるから、さっさと悩みを白状しなさいよ」




由香がそう言ってチョコレートの包みを開け、私の口に一粒押し込んだ。



口内に広がるのは、オレンジ風味のミルクチョコレート。



ゆっくり溶かして十分に甘さを味わってから、苦味いっぱいの話を口にする。



由香に話したのは、この前の日曜日、児童公園から帰った後のできごと。



ふたりですき焼きを食べながら、
美果子さんの用件が何だったのかを尋ねると、

久遠さんはこんな話を始めた――。




『研究所時代に手がけていたのは、バイオエネルギーの研究。

あれは、まだ完成していない。

俺が結果を出したのは、基礎理論の部分だけなんだ。


俺が研究所を去ってから美果子達は、それを実用化できるよう研究を進めていたようだが……。

結局10年経っても、少しの成果も上げられないらしい』




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