ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
それを聞いた時、単純な私は喜んでしまった。
久遠さんの功績を奪って追い払ってから、
やっぱりその先は、自分達だけじゃ無理だったと気付いたってことでしょ?
自業自得の美果子さんに、同情はいらない。
ザマーミロ!って感じ。
どうしても“恋人を裏切った"という過去をメインに考えてしまう私と違って、
久遠さんは研究者らしい考えを巡らせていた。
『あれは画期的なバイオエネルギーなんだ……。
アレが実用化できれば、世界にエネルギー革命を起こせる。
石油などの化石燃料に頼らない未来が約束される。
10年前の俺の基礎研究を、実用化までもっていくことは、未来の人類のためなんだ……』
エネルギー革命……?
未来の人類のため……?
スケールが大き過ぎる話に、私はポカンと口を開けるだけだった。
相槌すら打てない間抜け面した私に、久遠さんは話し続けた。
『美果子に頼まれた。
研究所に戻って、手伝って欲しいと。
アレは一年二年で終わる仕事じゃない。
やるなら10年……いや、もっと長期を覚悟しなければならない。
夏美、俺と一緒にアメリカで暮らさないか?』