ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


一応考える時間をもらって、返事は翌日にした。



『行きたくないです……』



そう言った私に久遠さんは、
『そうか』と言った。



『この話は断る。考えさせて悪かったな。

もうこの話は、忘れてくれ……』




私が一緒に行かないなら、久遠さんもアメリカには行かない。


その決断は嬉しいはずなのに、
なぜか胸が痛かった。



根っからの研究者の久遠さんが、
その研究をやりたがっているのは、

口に出さずとも伝わってきた。



新しいビールを生み出すのも、それなりに楽しいみたいだけど、

10年前に手がけていた研究とは、思い入れが違う。



盗まれた研究を再び自分の手で続けられるのは、大きなチャンス。



しかもそれは世界的な研究で、
スケールの大きさは、ビール研究と比較にならない。



絶対にやりたいはずの研究を捨てて、私を選んでくれるのは、

結婚を約束したせいなのか……。



嬉しいのに、胸が痛い。


久遠さんに対して、悪いことしている気分になってしまう……。



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