ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんの右手には、ファイルや企画書などが抱えられていた。
私がさっきお茶出しした応接室では、企画部の部長さんを始め、我が社のお偉いさん達が、
ビールイベントについて、主催者側から説明を受けている最中。
久遠さんがその場に呼ばれたということは、
イベント用に新ビールの開発でも命じられたのかも。
そして……。
「悪いが話を聞かせてもらった」
真顔の久遠さんが、深刻みを帯びた声でそう言った。
給湯室で声を荒げたり泣いたりするのはマズかったと、後悔しても遅かった。
久遠さんは私のためにアメリカ行きを断ってくれたのに、
勝手に悩み続け、うじうじメソメソしていたと知られてしまった。
自分でも嫌になるくらいに、今の私は醜い。
由香にも呆れられている。
久遠さんだって、こんな女は嫌なはず。
嫌われてしまったかも……。
そんな不安に襲われた。
せめて泣き顔を見せまいと、久遠さんに背を向け壁に向いた。