ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「夏美と二人にしてもらえないか?」
久遠さんの静かな声を、後ろに聞いた。
足音とパタンとドアの閉まる音がしたので、きっと由香が出て行ったのだと思う。
広さ二畳半ほどの狭い給湯室に、
ふたり切り。
醜さを露呈し、嫌われてしまったかもと恐れる私は、久遠さんと向き合えない。
私のすぐ横にある丸椅子の上に、
久遠さんは持っていたファイルや企画書を投げ置いた。
狭い給湯室に響いた大きな音に、
肩をびくつかせてしまうと、
安心を与えるためか、久遠さんが私の背中を抱きしめた。
ぎゅっと強く抱きしめて、彼は耳元でゆっくり話し出す。
「不安にさせて、悪かった。
どうも俺は、言葉が足りないみたいだ……。
アメリカ行きを断ったのは、夏美のせいじゃない。
お前に辛い思いをさせることは、俺にとっても辛いことなんだ。
だから、我慢して付いて行くべきかと悩む必要はない。
行っても俺の重荷になると、考える必要もない。
お前が側で笑ってくれることが、俺の幸せでもある。
夏美……。お前を愛している。
怒ったり喜んだり驚いたり、表情がころころ変わるところも、
ハムスターみたいに少々行動が落ち着かないところも、
俺の腕の中にすっぽり収まる小さな体も、可愛い声も……。
お前が思うより遥かに強く……俺はお前を愛している……」