ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
私には全く理解できない、特種な仕事をしている彼。
端正な横顔や、白衣の背中を見つめていると、
箸を動かすのを忘れてしまう。
心拍数が上がっていくのを、
自覚していた。
一つの才能に特化した人は素敵だと思う。
それが自分ができない分野なら、
尚さらのこと。
胸のドキドキが加速しそうになり、慌ててブレーキを踏んだ。
久遠さんはカッコイイが、
恋愛対象にしてはいけない。
研究とハムスターだけを愛する偏愛者なんて、
どう考えても、結婚相手に向かない。
『真面目で優しくて、将来、良い夫になりそうな人じゃないと、
恋をしてはいけない』
これは幼い頃から、繰り返し聞かされてきた言葉だ。
私の脳細胞に、呪いのように刻まれた言葉のお陰で、
上昇していた心拍数が、無事に落ち着きを取り戻した。