ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
私の目に映るこの空よりも、高い高い上空を、今頃久遠さんは飛んでいるはず。
ポケットからスマホを出して、予め作っておいたメールを、久遠さんに送信した。
それは、全てを告白するメール……。
『久遠さん、ごめんなさい。
私はアメリカには行きません。
嘘をついていた理由は、久遠さんを自由にしたかったからです。
私のことで、やりたい研究を断念して欲しくありません。
弱い私は久遠さんに迷惑かけずに、アメリカで生活できる自信もありません。
別れるしかないと、勝手に結論を出したことを、きっとあなたは怒るでしょうね。
怒ってくれてもいいです。
怒って、愚かな私を嫌いになって下さい。
そして研究一筋に、久遠さんらしく研究者の道を突き進んで下さい。
いつか久遠さんの研究で、世界にエネルギー革命が起こる日を楽しみにしています。
ミカコさんのことは心配しないで下さいね。
私が責任を持ってお世話しますから。
私達は違いすぎました。
久遠さんは、久遠さんの道を。
私は私らしく、地味で平凡な幸せを、日本のどこかで探してみようと思います。
今までたくさんの愛情を、ありがとうございました。
久遠さんと愛し合えた日々は、私の一生の宝物です。
さようなら……。 夏美』