君から好きを引き出す方法
「美咲ちゃんは静と一緒で頑固だからね。最初のイメージでその人を固定しておきたいのよ」
「そ、そんな事は・・・・」
「静を落とすのにも彩さんは苦労してたからなぁ」
そう言って懐かしい様に語る千夏さんの口からこぼれたのは私の両親の名前。
彩(あや)は父親、静(しず)は母親。
私は母親に良く似た容姿だと自分で認めている。
長いストレートの黒髪に少しきつめの目元。
体が細いのも母親譲りで、特にダイエットをしているわけじゃない。
千夏さんの言葉に返す言葉もなく、今しがた購入され空になった商品棚に商品を陳列し始めると。
「でも、玄くん頑張ってるわよね。美咲ちゃんにどんなに邪見にされても毎日来るんだから」
「それは・・・ストーカーだからです」
「ぶっ、確かに・・・」
千夏さんが私のストーカー発言にケラケラと笑いだすのに、子供のように膨れて睨んでしまった。
私はかなり深刻なんですけど。
むすっとしながら少し乱暴に商品を陳列していれば、これまた痛いところで気づいてほしくなかった事に千夏さんが振れ始めた。
「でも、そのストーカーくん今日は随分遅いじゃない」
その言葉でぴたりと陳列の手が止まり、複雑な感情が舞い戻ってしまった。
そう、確かにいつもならもう来ててもおかしくない。
なのに今日は来る気配がない。
それに気がついていたのに気がつかないふりをしていたのは、自分がそれをかなり気にしていた事を誤魔化す為。
だって気づいてしまったら・・・。
あらぬ妄想で悩んでしまうと理解していたからなのに。
なんでよ?
もしかして、
昨日の私の言葉のせい?
いやいや、あんなんでへこたれないでしょ。
少ししたらまたバカにした態度で現れる筈!!。
なのに・・・・。
カウンターで頬杖をつきながらぼーっと入口を見つめてしまう。
紺色に夕焼けの赤が絶妙に混じる夕方のグラデーション。
だけどそれを綺麗だとか感想を抱くスペースは私の中にはなかったらしく、悔しいかな頭で繰り広げられる自問自答の終わりのない会議。