full of love~わが君の声、君の影~
はい終了。と言わんばかりの一言。
た、確かに・・それなら合点がいく。
―――「おさまったら一気にいきましょう」
―――「私のことは気にしないで。とにかく自分のタイミングで立ちあがって行ってください
コンビニの店員には話しておきます」
あの声。穏やかなそれでいてキリリと背筋が伸びた声。
焦っていた俺はあれでずいぶん落ち着いた。
病院の看護師さんって確かに皆落ち着いていて何か頼もしい。
俺は何故かさっきのハイテンションから一気に落ちた。
「たしかにそうかも・・あの状況であんな風に動けないよな普通は・・そっかあ看護師さんかあ・・」
納得。
納得だけど、仕事の一部だと思うと少し残念な気がした。
「しかもベテランだな」
「うっ・・そこまで読む?」
「いくつくらいの人だったのさ?」
「・・・」
明らかに年上だった。しかも1つや2つではない
「・・・暗かったしなあ~メガネかけてニット帽かぶってマフラーも巻いていたなあ~」
部品は思い出すが肝心な顔がはっきりしない。
「声ははっきり覚えてるんだけどなあ」
「また声かよ」
「落ち着いていてなんかホッとできる声だったなあ・・初めて聞いたのに“信じられる”声だった」
「珍しいな」
「だろ?あの時はそれどころじゃなかったから・・もう1回ちゃんと聞きたいかも」
「・・ホント変わってるよなお前」
“変わってる”
それを自覚したのはこの仕事を始めてからだが
俺は子どもの頃から音や人の声に敏感だった。