full of love~わが君の声、君の影~
周りに言わせると俺は耳が良いらしい。
その話は初めて会った人とでもすぐにセッションできるというところから始まった。
初期のHalcのメンバーで今はプロデューサーの坂上を始め事務所のスタッフは
俺のオーディションをみてそう思ったらしい。
ギターも歌も十人並みだった俺をかってくれたのはそこだと後から聞いた。
確かに楽譜を読むのが苦手な俺は耳で覚える。
周りの音を聞いて合わせる。
それが誰にでも備わっている物ではないらしい。
そのおかげで事務所に入ることが出来、坂上や神島に出会い、
俺に一生続けていきたいと思わせる仕事を与えてくれた。
『絶対音感』
そう言ってしまえば早いが
俺の場合は過敏すぎた。
この良すぎる耳は私生活にはときとして邪魔になった
俺は他人の好き嫌いを性格以前に声で判断してしまう。
いや、というより
この人は自分に好意を持っているか否かを声で判断してしまう。
その声の持つ感情につい敏感になってしまう。