full of love~わが君の声、君の影~
何だこの敗北感は。
別れる時、未練などなかった。
彼女は恨みごとの一つも言うことなく
涙の一粒も流すことなくあっさり別れた。
なのに今俺は後悔をしている。
取り戻すことのできない時を今更悔いている。
その日の夕飯は娘の咲と久しぶりに会う約束だった。
(別の日にするんだった・・;)
咲は自分で言うのもなんだが昔から俺に似て美人だ。
だがもうすぐ20歳になる娘は昔の彼女の面影をひきつれてやってきた。
おそらくさっき思い出したからだろう。
そう思おうとしたが話せば話すほどふとした仕草まで彼女を思い起こさせた。
考えてみれば
俺はこの子に何をしたのか
親として何を伝え何を残したのだろうか。
顔かたちと大学まで行かせただけの資金だけなのか
そんなことを考えるのもさっきの男のせいなのか。