full of love~わが君の声、君の影~

「いいのか?お前ちゃんとお礼言えたのか?」
神が俺の顔をのぞきこむ。
「お?なんだこれ?」

そうだ何も何も伝えてない
昨日からいや彼女がライブに来てくれるとわかったその日からずっとずっと何を話そうか考えてきたのに。
電話じゃなくて顔を見てちゃんと言わなければならないことがあった
俺何ひとつ言えてない

「おおー!カップケーキじゃん!いいねえ~手作り♪」
いつの間にか俺の手から紙袋を奪って勝手に中あけてやがる。

だが今の俺はそんなことどうでも良かった。
周りの眼も気にせずに、部屋を飛び出していた。

出口のギリで追いついた。
「高木さん!」
振り向く彼女。
「はあはあ・・今日は・・今日は来てくれてホントにありがとうございました!
あの日声をかけてくれたことも、ストールをかけてくれたことも薬も水もみんなみんな嬉しかったです!
ホントにホントにありがとうございました!」
俺は体を二つ折りにして深く深く頭を下げた。 

間が開く。
なんだ心臓がバクバクいってる。
こんな近距離走って来ただけで?

彼女の声が下げた俺の頭にふりそそぐ。
「そっか良かった・・あの時声をかけようか迷ったんです本当は。うずくまっていたから誰かもわからなかったし・・でもかけて良かったんですね・・私も嬉しいです」
彼女の声は少し震えて聞こえた気がしたが最初のときのように穏やかな優しい声だ。
何故だろう

ホントに彼女の声は俺の耳にとてもよく響く。

俺は頭を上げる。
「あ・あの・・また電話させてもらってもいいですか?」

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