full of love~わが君の声、君の影~

「俺・・今日子さんに会ったよ」
「え?」
「夢でね、夢で」
「夢ね、うん」
「結婚式の赤いドレス覚えてる?あれ着ててさ・・髪も化粧もばっちりなんだぜ!笑っちゃったよ」
「へえー」
「葬儀の時に今日子さんにあのドレス着せてあげたの咲ちゃん?」
「うん、そうよ」
「どうして?」
「あれ?覚えてないの?お母さん、結婚式のときにあのドレス気に入っちゃって。『絶対棺に入れる時に着せてね』なんて言ってたのよ。こんなに早く着せることになるとは思わなかったけど・・」
「そうだったんだ・・くくっやたらなこと言えねえな・・」
「え?何?」
「いや、何でも」
「それで?夢でお母さん何か言ってた?」
「咲ちゃんに『出産おめでとう』って言ってくれって。それと『“恭一”って良い名前だね』だって」
「ホント?」
「うんホントホント。夢だけどね」
「そっかあ・・うれしいなあ・・」

「ねえねえ!さくらは?さくらは?」
「さくらには・・『さくらは良い子で可愛い子になったね』って」
「えーそれだけ?」
「『そのままでイイ』てさ、さくらは」

「俺は?」
「神?神の話なんかしたっけなあ・・」
「はあ?なんだよそれ!」

「おとうさんは?おとうさん何話したの?」
「話いっぱいしたよ・・5年分話したよ・・」
「ええーいいなあ」

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