薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
「バカップルって……」

少し小馬鹿にするような意地悪な笑みに、まぁそうかも、と思いながら玄関に置いたままだった優生の鞄を手に取る。

「ありがとう」と小さく言った彼の指先が、鞄を差し出す私の左手にそっと触れてすぐに離れていく。何か意味ありげなそれに視線を上げると、柔らかい瞳が私を捉えた。

「今日は会議が入って悪かったな。でも、来週出来上がる結婚指輪はふたりで取りに行こう」

結婚式に間に合わせるよう、都内のジュエリーショップで特注していた結婚指輪は、来週の水曜日に出来上がる予定だ。

何かと忙しい優生にわざわざ時間を作って貰うのもなんだか申し訳なくて、少し寂しいけど一人で取りに行こうかなって思っていたのに。

どんな小さな想いだって優生は簡単に見透かしてくれるんだよね。

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