薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
「絶対似合いますから」と太鼓判を押されながら試着してみたドレスは、上品なシルクレース地にスパンコールをあしらったボリュームのある華やかなもの。

試着室を出ると、きゃっと短い悲鳴が上がった。


「すっごく素敵です!」


あらかじめ写真撮影の確認を済ませていたらしい美希ちゃんが、スマホを片手にパシャッとシャッター音を響かせた。

膝を折って色んな角度から写真を撮り始める美希ちゃんに少し照れくさい笑みを返しながら、立て鏡の中にいる自分を見つめていると、なんとも言えない温かい気持ちで胸がいっぱいになった。

自然と左薬指のエンゲージリングに視線が流れる。

指輪を受け取ったあの日。
色濃いオレンジ色の朝焼けが差し込むあの場所でキラキラと眩しいくらいに輝いていたそれは、数ヵ月経ったいまでも変わらない輝きを放つ。

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