薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】

それは、父親を亡くし母親ともなかなか会えない優生が、寂しさを堪えるよう自分でつけた爪痕だった。

そこまで話し終えたゆりえさんは、深い息をつきながらテーブル置いたままのグラスにそっと手を添える。グラスの中の琥珀色の液体を見つめながら彼女は続けた。

『言ってやったのよ。ガキなんだからガキらしく甘えたり、我がままになって迷惑だってかければいい。何度もそう言ってやったけど、なかなか本心を話そうとしなかったわ。だけどね、ある時から優生は変わったの』

静かな声はそこで止まり、ゆりえさんの視線がゆっくりと上を向く。
彼女の瞳が隣にいる私を捉え、優しげな笑みを浮かべた。

『私ね。優生の婚約者の名前を初めて聞いた時、泣けちゃうくらい嬉しかったの』
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