薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
それは、母を早くに病気で亡くしたこともあったのだと思う。

でも、父を慕って集まる町の人達を見て、『私と大地だけのお父さんなのに……』と、父が取られてしまいそうで、つまらないやきもちを焼いてしまうこともあった。


そうだ。本当はあの絵だって……。

父に褒められたい一心から、必死になって描いたものだったことを思い出す。
すると、夢の中の父は幼い私に聞こえないほどの小さな声で呟いた。

『いつかお前も嫁にいっちまうんだろうなぁ。まぁ、でも……』

夕日が一段と赤く染まって見える縁側で、まだ幼い私を見下ろす父の眼差しは、いつになく優しげに見えた。


ねぇ、お父さん。
あのとき、お父さんが続けた言葉は、一体なに?

< 39 / 95 >

この作品をシェア

pagetop