薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
怒りと悔しさと悲しみが入り混じった感情をそのまま声にしてやった。


「心配ってっ……するに決まってるじゃない! だってお父さんに何かあったら私っ」

そこまで声にすると、不意に幼い頃に母を亡くしたことを思い出して声が詰まる。
眼の奥の熱に気づかれないように視線を外すと、静かな声が届いた。

「心配だからって一度決めた道を変えるなんてな。誰も……俺が望んでねぇ。勘違いすんな」

少し前とは違う落ち着きを取り戻した声が鼓膜まで響き、返す言葉が見つからない。

見つめることしかできない私に父は一瞥をくれてから、「ちょっといいか?」と優生の腕を強引に掴み、そのまま二人で店の中に入ってしまった。

店に入る前に優生は一度私を振り返り、『大丈夫』というように小さく頷いてみせた。
ピシャリッと扉が閉まる音が冷たく響くと、胸がキリキリと痛み出す。

そんな私を気遣うように、金田のおじさんがため息をついた。

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