薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
不意に、思い出せそうでいつも途切れてしまっていた幼き日の思い出が、脳裏に蘇る。



夕日が一段と赤く染まって見える『その場所』は、この町にひとつだけある神社だった。
遊び疲れて寝てしまった大地を背中におぶった父の隣には、まだ幼い私がいる。

私を見下ろす父は、優しさを湛えた瞳でこんなことを呟いた。

『惚れた弱みに付け込まれて、いつかお前も嫁にいっちまうんだろうなぁ……』

そこで言葉を止めた父が小さく息をつく。


『まぁでもよぉ。惚れた相手との子宝に恵まれた幸せを知っちまったからな……。きっとそのときが来ても、反対なんて出来ねぇのが辛いところだな』

そこまで続けた父の声は少し寂しそうで、長いこと何かをお祈りした後に、いつになく優しげな笑みを浮かべた。
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