薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
そうだ。あのとき、私は……。
お父さんの言っている意味は分からなかったけど、離れてしまう『いつか』を感じてお父さんの腰にギュッとしがみついたんだ。


鮮明に甦る記憶に胸が締めつけられる。


振り返ると、いつもそうだった。

小学校の友達と口喧嘩をしたときも。
担任の先生には無理だと言われた高校受験も。
生まれ育った町を離れて、東京の大学に行きたいと言ったときも。

優生と結婚したいと報告をしたときも……。


私が自分でこうしようと信じた道を。
時に不安で揺らぎそうになる道を。

いつも最後まで付き進むことが出来たのは、そっと見守って背中を押してくれる父の存在があったからだ。

変わらずに続いていく毎日があまりにも幸せすぎて。
いつしかそれが当たり前になって、忘れてしまっていたのかもしれない。
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