薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
静岡の実家を訪ねてから、数日経った金曜日。
このところ新車販売のキャンペーンがあり、私が所属する販売部は遅くまでフロアの灯りがついている。
2時間の残業を終えて、会社を出てから大地に電話をかけると、圏外の場所にいるらしく繋がらなかった。
「出ないなぁ。金曜だしお店が終わった後、どこか遊びに行っちゃったのかな……」
この一週間。やはり父のことが気になってしまい、何度か大地に電話をして様子を窺っていた。
水曜日に出来上がった指輪も優生と取りに行き、いよいよ明日は婚姻届を出すことを決めている。
明日は土曜日だけれど、役所の休日用の窓口で婚姻届は受け取ってもらえるらしい。
書類に不備がないよう、必要なものはもう何度もチェックしてすべて揃えてあった。
「藤川 愛でいられるのも、今日が最後なのに……」
ポツリと呟きを漏らして駅までの道を歩き始める。