薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
優生はそこで言葉を止める。
彼を見つめる父の瞳は、微かに揺れたように見えた。


優生を好きになって……。
大切な人とのすれ違いを経験して、わかったことがある。

どんなにわかりあっているつもりでも、相手の心すべてを理解することなんて、きっと出来ないだろう。
だからこそ、ちゃんと向き合って大切な人が出すサインを見逃さないようにしたいと思った。

私と同じように、優生も感じてくれていたんだな……。

父の頑なな心にまっすぐ響いただろう言葉は、私の目頭も熱くさせる。

「すまねぇ」

耳を澄まさないと聞き逃してしまいようなほどの細い声が、父から零れた。
頑固オヤジレベル【国宝級】な、父の辞書には絶対にないであろう謝罪の言葉に、大地と顔を見合わせる。

私と大地に下げた頭をゆっくり上げた父は、今日一番のバツが悪い顔を見せた。
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