薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
声は大きいものの、歌唱力があるとは思えず、呆れきった冷たい視線を流す。
そんな父の興味は、一人娘のウエディングドレス姿でなく、披露宴の進行表にあるようだ。

手加減なしに肩を叩かれた優生は、肩をさすりながら丁寧な口調で答える。

「歌はそうですね。状況に応じて検討しようと思ってます。それとは別に、お父さんには挙式で愛とバージンロードを歩いて貰えたらと思っているんですが……」

「バージンロード?」

そこで首を傾げた父に、優生も困り顔だ。

今日という日を迎えるまで、もう何度も、言い聞かせてきたっていうのに。なんで忘れちゃうのお父さん! 娘の結婚式をのど自慢大会と間違えてない!?

そんな心の訴えを吐き出してやろうと、ドレスを少し持ち上げて一歩踏み出したら、とんでもない言葉が父から飛び出た。

「バージンロードって……愛、お前。この期に及んで、まだ捧げてなかったってのか!?」

「……っ!」

狭くもない控え室に父の声が響き、和やかな雰囲気を凍てつかせる気まずい沈黙が流れていくというのに。

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