薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
「旦那の心、娘知らず…ったぁ、日本も終わったなぁ」

「くぅー」なんて、わざとらしい声(絶対、わざとだ!)で、目尻に涙をたたえる父の姿に、この惨状を救ってください、と神様に祈ったところで、後ろから助け舟が出された。

「やだぁー! 藤川パパったら、そんなわけないのにぃ。すっとぼけ万歳ってことで、一枚頂きますよぉ!!」

そこで、「なにぃ!」と顔をしかめた父にカメラのレンズを向けたのは、美希ちゃんだった。

(それにしてもお父さんったら、『捧げてない』って文句言ったくせに。どっちならいいのよ)。


明るい彼女の笑顔は、室内を覆う気まずい空気を一掃してくれて、「ありがとう」と気を利かせてくれた後輩に感謝の気持ちを耳打ちする。

すると、いたずらっぽくこう返された。

「幸せをくれるブーケトスは私の方へ投げてくださいね?」




それから両家の写真撮影を終えて、いよいよ挙式となるとき。
メイクルームの窓から射し込む光に瞳を細めると、「愛」と優しく名前を呼ばれる。

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