青空の下月夜に舞う
五分くらいか。
もう口にだしてしまおうかと思った時。


――カチャリ。

リビングの扉が開いて。


「あちー。やっぱ慶ちゃん居た~」


入ってきたのは、聞きなれた声。
振り返ると、赤い髪の祐也と、黒髪の響。


どかどかと足音を立てて、ソファーにどん、と座った祐也。

ゆっくりした動作で続いてすわったのは響。

響の服は黒のTシャツにデニム。


吸血鬼を想像していた昼間。
偶然黒の服を着ていた事で、笑いそうになる顔を横に反らして誤魔化した。


「麻衣、何笑ってんの」


そんな私に。
しっかり気付きやがった祐也。


「え。麻衣?まみちゃんでしょ?」

祐也の声に、一番に反応したのは裸女だ。


それはそうだろう。
私は今日一日“まみちゃん”になっていたんだから。


「違うよ美咲さん、お前も話せよ。偽名使ってもすぐバレんだろ」

「だからまみちゃん見つかんなかったんだ!下駄箱の“まみ”探したし私。あはははっ」

「あれ?まみ、と麻衣が混ざってたんだな」

「まみちゃん悪くないよ。あ、麻衣ちゃんか。慶太郎がバカだから悪いんだからね?」

私を見て優しく言葉をかけてくれる。
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