偽フィアンセは次期社長!?
「大事な身体だし、何かあったらと思うと……」


そう思っているのは本当のことなのに、何だかこのタイミングで言うと嘘っぽくて嫌になる。


さっきの涙を誤魔化すために、重ねている言葉だから。


何だかごめん、那由子。


「そりゃそうだ。あーんな細っこい身体でお母さんになるんだもんなぁ」


……へぇ。

「課長って……」


「ん?」


「意外と優しいっていうか……血の通った人みたいなこと言うんですね……」


言ってからハッとしたけれど、時すでに遅し。


「俺のイメージは、血も涙も無い極悪非道みたいな奴なんだな、お前の中で」


車内に低く響く課長の声。


「いや、そんなつもりは……」


「いや、他にどんな意味が?お前良い根性してるじゃねーか。

はい、お友達が無事に病院に行き、適切な診察を受けられ、今お前が泣くくらい安心しているのは誰のお陰でしょーーーーかっ」


……ううう。


「ま、松田課長様のお陰であります……」
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