蜀宮廷日記
真由姫は不安を抱えながらも、意を決して弁当をつくることにした。


やはり どうしても、関興の気持ちを確かめたかったのであった。

“私に対する気持ちを確かめないと・・・。そして春蘭への気持ちも知りたい。そのためにこのお弁当に気持ちを込めて。”


真由姫も朝早く起きて甲斐甲斐しく、弁当作りにいそしむのであった。



一方こちらは洛陽。


魏の都である。


その一角の大きな屋敷に一人の間者が入って行った。


「何、蜀の家臣の内輪揉めとな。」


「はっ、諸葛亮と李厳との間には亀裂が生じ始めているとのこと。」


“こいつは面白い!”

不敵な笑みをたたえる一人の謀臣。先代の曹操から切れ者と警戒されただけの大物。


司馬懿 字は仲達。


後に諸葛亮の宿命のライバルとなる男である。


「他に蜀に動きはないか?」


「ございません。のんびりと梨狩りなどを開くようで。ただ、今回は武官が招待されているようですが。」


「念のために調べよ。それから、トウ艾を呼べ。」


「はっ。」


間者は下がり、変わりに若い武将が一人来た。

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