【退屈と非日常】(仮)
なんて短絡的な思いつきだっただろう、まあ誰でもそれくらいは思いつくもの。
でも問題はそこから先だった、別の世界…それは何だろう。

小説の中のようにどこか別の世界へ飛ばされるというのは一生ありえないだろう、今仲良くしている友達が実はどこかの国の王様の隠し子だったとか。
ああ、そんなことがあればどれだけ面白かっただろうに。

「ちょっとアヤちゃん、一人で笑ってんの怖いからちょっとやめて」
「ごめんごめん、なんていうかちょっとトリップしてた」

思わず笑っていたらしい顔を引き締める。そんなありもしないことはひとまず置いといて、他のことを考えよう。
今までしたことがないこと、それもまた一種の別世界―学校じゃないもの、習い事はしたことがある。

塾通いは当面必要ないだろう、私の今の成績なら付属の四年制大学、もしくはどこかの指定校推薦が取れるであろう。
それならアルバイトだ、アルバイトの初歩と言えば、コンビニエンスストア。

食べ物にダイレクトに触る仕事はちょっと勘弁だったし、親が許さなかった。
よしやってみよう、お金が手に入るのもいいことだ、うちは私学に通えるほど実はお金持ちでも何でもないし、これでちょっと親孝行と言う名の恩着せが出来るだろう。

そう考えた私はその勢いのまま、最寄駅近くにもう直ぐオープンするコンビニの、オープンスタッフ募集の電話したのだ。

そんなこんなでトントン拍子に面接の日取りが決まり、今、まさにその店の前で意気込んでいる。

しかも極度に緊張までしている、生来私は緊張しやすいのだ、胃もちょっと痛い。
何故ここまで私はヘタレなのかと思うけれども今はそれを考察している時間はない。

ああ、どうしよう。
面接なんてどうすればいいかわからない、とりあえず履歴書は持ってきた。電話をかけるだけでもアルバイト情報誌に載っていた電話掛けマニュアルを三回読んだ。今日ここに来るまでに面接のマニュアルまで何度も読んでシュミレーションした、一応完璧のはずだし、忘れ物はないと思う。
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop