【退屈と非日常】(仮)
正直、怖いと思った。
目が笑ってない、寧ろもう面接は始まっているのかもしれない。
緊張で膝が震える、背筋が凍りそうだ。
こんな緊張したの、高校受験の面接の時以来だ。
扉を開けてもらい、勧められた椅子に座る、膝をきちんとあわせて、その上に手を重ねる。
昨今のアルバイト情報誌にはマナーまでばっちり載っている、便利な世の中だと思う。
「履歴書をいただいてよろしいですか?」
「はい」
お兄さんが目の前の椅子に座り、事務机に載っていた面接予定表らしきものにざっと目を通す、電話をかけた時、そう言えば色々聞かれた、希望する勤務日、時間は?とか。
封筒に入った履歴書を差し出すと、お兄さんの綺麗な白い指が封筒の端をハサミで切り、中から履歴書を取り出していた。私はそれをぼんやり見ていた。元来私は手フェチなのだ。
美しい手の人の悪い人はいない、悪い男はいるかもだけど、が私の意見だ。
「カドクラアヤさんですね」
「はい」
履歴書にも書いてあるし、最初にそう名乗りましたけど、と思ったけれど素直に返事をした。
では始めましょうか、と面接官のお兄さんは言った。
マニュアル通りに志望動機、勤務希望曜日と時間の確認という手順が踏まれる。
一体この人はどれくらいの人にこういうことを聞いてきたのだろうか。
「質問はありますか?」
お兄さんは何度目かの眼鏡を押し上げる仕種をしながらそう尋ねてきた、これもマニュアル通りの展開というヤツだろう。表情は最初に見たのと同じ、柔らかそうな笑顔、でもこれが本当の笑顔だとは思えない。何故だかそう思い込んでしまっていたけれど、そんな笑顔にも厭味はなかった。きっとこの人は最初から胡散臭い人なのだろう、だから私にはそれが気になっても不快じゃない、そういうことだと思う。
目が笑ってない、寧ろもう面接は始まっているのかもしれない。
緊張で膝が震える、背筋が凍りそうだ。
こんな緊張したの、高校受験の面接の時以来だ。
扉を開けてもらい、勧められた椅子に座る、膝をきちんとあわせて、その上に手を重ねる。
昨今のアルバイト情報誌にはマナーまでばっちり載っている、便利な世の中だと思う。
「履歴書をいただいてよろしいですか?」
「はい」
お兄さんが目の前の椅子に座り、事務机に載っていた面接予定表らしきものにざっと目を通す、電話をかけた時、そう言えば色々聞かれた、希望する勤務日、時間は?とか。
封筒に入った履歴書を差し出すと、お兄さんの綺麗な白い指が封筒の端をハサミで切り、中から履歴書を取り出していた。私はそれをぼんやり見ていた。元来私は手フェチなのだ。
美しい手の人の悪い人はいない、悪い男はいるかもだけど、が私の意見だ。
「カドクラアヤさんですね」
「はい」
履歴書にも書いてあるし、最初にそう名乗りましたけど、と思ったけれど素直に返事をした。
では始めましょうか、と面接官のお兄さんは言った。
マニュアル通りに志望動機、勤務希望曜日と時間の確認という手順が踏まれる。
一体この人はどれくらいの人にこういうことを聞いてきたのだろうか。
「質問はありますか?」
お兄さんは何度目かの眼鏡を押し上げる仕種をしながらそう尋ねてきた、これもマニュアル通りの展開というヤツだろう。表情は最初に見たのと同じ、柔らかそうな笑顔、でもこれが本当の笑顔だとは思えない。何故だかそう思い込んでしまっていたけれど、そんな笑顔にも厭味はなかった。きっとこの人は最初から胡散臭い人なのだろう、だから私にはそれが気になっても不快じゃない、そういうことだと思う。