極彩色アリス
開かれた先にあったのは空虚。
真っ白な壁と床。
灯りもついていないのに真っ白な光で包まれた広い広い部屋。
その中央にこじんまりと置かれた一人用のソファー。
真っ黒な革貼りのソファーで、金の細工が施された豪華絢爛なその椅子は何かただならぬ気配を感じた。
兎を見てやると視線に気づいてかこちらを振り返る。
にんまりとした気色悪い笑みを浮かべたような気がした。
『この椅子はねー、あんたたちが目指すべき者が座る玉座なんだよ。 すべてが終わり、すべてが始まるとき、この椅子に新たな【アリス】を座らせてあちらの世界の罪と罰を一点に引き受けるための席…』
兎は説明しながらその場でくるくる回る。
一頻り回ると足を揃えて私たちに向き直る。
いつもの人を小馬鹿にした雰囲気とは異なる真剣かつ、侵監な空気を纏うと人差し指をたてて口許に添える。
ガラスが割れたような音が頭のなかに響いてきて思考を止められる。
他のやつらも同じのようで、耳を塞いだり、頭を抱えたりして苦しみながら兎を見据えていた。
(さぁ、ここから始まる物語を己の力で勝ち取れ)
兎の声でなく、違ったソプラノの声が聞こえた。