極彩色アリス
There lived
まだ頭が痛む。
あの音が頭に残って鬱陶しい。
次の部屋を案内すると言いながら兎は私の腕を引く。
呆れながら着いていく。
先ほどの玄関ホールに戻ってくると、大階段の左を通過してリビングに入る。
真っ白な壁紙に塗り潰された部屋は広々としていて開放感がある。
大きなガラスのドアの先にはガーデンチェアとテーブルが置いてあるベランダが見える。
煉瓦造りの暖炉に年期の入ったローテーブル。
柔らかそうなソファーとロッキングチェア。
本棚もあり、一日中ここで過ごすこともできそうなくらい充実した作りになっている。
テーブルや至るところに飾られている花もいいアクセントになっていて、中々居心地が良さそう。
開け放たれている扉はチョコレートのような模様で気分まで甘くなってきた。
私が部屋を観察しているうちに皆は思い思いのことをして寛いでいた。
ため息をついて兎を見ようと顔をあげたとき、不意に目を惹く物があった。
それから目を離さずに近付き手に取ってみる。
割れている写真立て。
恐らく家族写真だろう、父親だと思われる男性が天色のワンピースを着た少女を抱えている。