極彩色アリス
本を読んでいる僕を見下ろすように傲慢が目の前に立っていた。
私の椅子の背凭れに手をおいて覆い被さるよう。
にやっと歪められた口元と赤色の瞳は私が一番嫌いなあの人を思い出させるからイラっとした。
「煩い。 自己紹介なんてあんたらが勝手にしただけじゃん、私には関係ないし面倒臭い」
傲慢の手を払い椅子を立つ。
扉に向かって歩き出すと視線が集まるのを背中に感じた。
「兎だって集まるしか言ってないし、態々交流を深める必要無いでしょ?」
私達は生死を賭けたアリス候補者なんだから。
全ての視線を無視して部屋を後にした。
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何だか疲れてしまった。
大勢での会話や食事は苦手だが、あの一件の後だったからか、少しだけ人の傍に安心感を感じた。
ほんの少しだけど。
時間を見ようとポケットに手を入れて時計を探る。
……無い。
もしかして、時間を気にしたあまりあそこに置いてきちゃった?
探索の時ざっと確認したがこの洋館に時計は一切無い。
あの懐中時計と自室の中にある目覚まし時計以外、この世の時間を知るすべはない。
怖いけど、とりに行くしかない。
階段さえ登らなければ大丈夫だろう。
挫いた足を引きずりながら牢屋に向かった。