極彩色アリス

私の親だった男女。
友だった女。
私を騙した男。

もう、会うこともない、さよなら。

心の中で別れを告げて歩き出す。
黒のブーツがコンクリートを鳴らす。
兎の記す穴の前に立ってみると、言いようがない不安や恐怖が襲ってきた。
この先にあるのは罪と罰。
それらを受け入れる覚悟はとうに出来ている。

「恐れたりしないよ? そんな感情、抱くだけ面倒臭いもん…」

吐き捨てるように言い散らすと後ろから笑い声が聞こえた。
視線だけであいつを一瞥する。
今まで静かだったのが嘘のように腹を抱えて笑っている。
藍色の空に轟音に負けないくらい響く笑い声。

ああいった輩は関わらないのが一番だ。
…、と思うと直ぐに絡んでくるから不思議だ。
いきなり人の前に立ち塞がったかと思えば、横に並び肩に腕を回してくる。

「そんなに嫌そうな顔しないでよ♪ 同じアリス候補者なんだからさ♪」

語尾を弾ませるこの口調は癪に障る。
苛立ちが募る…。

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