極彩色アリス
しばらく大人しくしていると暴食が声を低くして話しかけてきた。
「怖がらせるつもりは無かったんだ、ごめん。 ……落ち着いてくれてると嬉しいな?」
大人の対応というやつだろう。
取り乱した私を慈しむように優しく抱き締め頭を撫でてくる。
子供扱いはやだ。
そう思うと自然と顔をしかめていた。
その顔を見て察したのか、暴食はうーん、と考えるようなうなり声をだす。
「あ、怠惰ちゃんが好きな食べ物ってなに?」
「…好きな、食べ物……?」
にっこり笑ってうなずいている。
…正直、好きなものって何なのか知らない。
私にとって好きなもの…。
……。
ちらりと暴食を見るとどんどん困り顔になっている。
私が無反応なのに慌てているのが分かる。
……わからないな。
ここに来るまであんなに暖かくてちゃんとしたご飯を食べたのはいつ以来だろうか。
毎日が冷たくて、味なんて分からないくらいの傷んだ材料で出来たご飯を食べていたのだし…。
美味しいと言う感情すら亡くしてしまっているから、答えられない。
……好きなもの…、か…。